実験短編・夏の少年が思うこと



〜〜〜実験短編・夏の少年が思うこと


 夕樹のベッドはふかふかだ。
 午前中は学校のプールで泳ぎまくって、午後はエアコンのある夕樹の部屋でゲーム見ながら昼寝。
 サイケな効果音が頭の中をいったりきたり。
 これって何の音だっけ・・・
 夕樹の遊んでるゲームの名前さえ、今は思い出せない。

 夏休みに入ってここ最近、毎日毎日こんな生活をしている気がする。

 ああ・・・疲れた。
 いつものことだけどちょっと泳ぎ過ぎたかもしれない。
 サラサラの掛け布団と心地良い倦怠感が眠気を誘う。
 夕樹の匂いがするその布団を抱きしめた。

【夕樹】あんまり身体擦り付けるなよな、布団にお前の匂いがつく。

【俺】いいじゃん・・・。

 疲れてあんまり頭が回らない。

【夕樹】夜中お前と一緒に寝てる感じがしてヤなんだよ。

 ・・・生意気だ。
 そんなふうに言われると傷つくじゃないか。

【俺】うるせぇ。

【夕樹】お前がうるせぇ。文句言うなら帰れ。

 ・・・・・・ちっ。
 ホント生意気だ。

 ・・・・・・けど頭回らない。
 寝そべったまま横目で夕樹の姿をのぞく。
 
 白い首筋・・・薄い肩骨・・・華奢な二の腕・・・・・・
 こんなに華奢なくせに・・・

 何かエロい。
 コイツってこんなエロかったけ・・・。

【夕樹】ヨダレたらすなよ。 

 生意気・・・。
 昔は俺の後ろを引っ付いて歩いてたっていうのに、いつからお前はそんなにエラくなったんだ。
 ゲームばっかしてねぇでこっち向いて話せよ・・・。

【俺】無理。

 布団に顔を埋める。

【夕樹】無理じゃねえ。

【俺】無理。いーじゃん、ちょっとぐらい。

【夕樹】よくない。ホントに追い出すぞ。

 ・・・外は熱い。

【俺】それだけはイヤだ。

 絶対イヤだ。

【夕樹】なら床で寝ろ。

【俺】硬いからヤだ。

【夕樹】ならヨダレたらすな。

【俺】・・・・・・わかったよ。

【夕樹】ホントにわかってんのかよ。

【俺】ああ・・・。

 これだけ言葉のやり取りをしてるっていうのに、一瞥もこっちを向いてくれない。
 視線はゲームにクギヅケで・・・

 サルかコイツ・・・。

【夕樹】ああっ!

 お・・・ゲームで何かあったっぽい。
 なんか悲しみやら怒り混じりの声をあげてコントローラーを床に投げつける。

【俺】壊すなよ。

【夕樹】壊してねぇよ!

【俺】お前荒れたなぁ・・・昔はもっとオドオドしててかわいかったのに・・・。

【夕樹】お前の性格が移ったんだよ!ああっくそっ!

 随分な言い方だな・・・。
 まあ・・・否定はできないか・・・。

【俺】どーしたよ?

 まあベッドを借りてる恩もある。
 話ぐらい聞いてやるか。

【夕樹】死んだ。

 簡潔に一言だけ。
 けどやっと、こっちに振り向いてくれたんで少しだけ満足だ。

【俺】そりゃよかった。

【夕樹】セーブしてなかったんだよ!三時間ぐらい損した!ああ〜ムカツク!レアアイテムだって取ったのに・・・!

 悲劇だな。
 けどま、ゲームなんかでここまで当り散らされてもなぁ・・・。
 夕樹は腰に手を当てて、すわった目付きを俺を見る。

 ・・・・・・そんな目で俺を見るなよ。

【俺】ゲームなんてやめて俺と泳ぎに行け・・・ってことさ。

【夕樹】お前と泳ぐと疲れるんだよ。

【俺】お前がヤワいだけだ。

【夕樹】現在進行形で疲れ切ってるお前に言われてもぜんっぜん!説得力ないね。

【俺】・・・・・・うるせ。

 あ〜〜冷房が涼しい。
 何をこんなイライラしてるかね、コイツは。

【夕樹】ちょっと詰めろよ。

【俺】あ?

 足で乱暴に押し退けられて俺はベッドの端に追い込まれた。

【俺】何すんだよ。

【夕樹】昼寝。俺も寝るんだよ。

 そういってドスンと俺の隣に身を投げる。
 せっかくのまどろみがコイツのせいでちょっと吹っ飛んだ。

【俺】・・・フテ寝かよ。

【夕樹】うるせぇ。

 ゴロンと俺に背中を向ける。

【俺】まったく、かわいくねぇなぁ。

【夕樹】・・・だから追い出すぞ。

【俺】・・・・・・へいへい。

 ・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・ま、いいか。
 一緒に寝るっていうのも、友達っぽいよな・・・。
 ゲームにばっか集中してる夕樹を眺めて寝るよりずっとイイ。

【俺】あふ・・・。

 寝返りをうつと目の前に夕樹の華奢な背中。

 白い首筋・・・薄い肩骨・・・華奢な二の腕・・・・・・

 あ〜〜何かエロい。
 ・・・何となく触ってみたい気もしたけど、眠いからやめた。
 それにきっと怒る。


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